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第二章(第一視点)
私は家に帰ってからも白十の質問を何度か思い出した。「その恩人に、申し訳ないなんて言ったらだめかな?」、その質問は何か私に突っかかるものがあった。
考えてみると私は、母の気持ちを知らずに生きてきたのかもしれない。今思うと母は、今よりももっと私が楽しく過ごすことを思い浮かべていたのかもしれない、思っていた家族の想像図に自分がいなくなっても。
それに、母は、こんな状況を見ると悲しむだろうか、涙を流すだろうか。こんなものは願っていない、こんなもののために自分の命を無駄にしたわけではないと、私は母の父と私への大きな愛情というものが見えていなかったのかもしれない。
でも、もうそれを確かめる道はない。今思っていることも仮定にしか過ぎない。その穴埋めには何の言葉でも入る。それは丸付けのできない質問であった。
私は一年前に答えを燃やされてしまったのだ、もう取り返しのつかない質問だった。
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