PANIC in the CiTY

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「マスター、起きてください」  うるさいな。人が気持ちよく寝てるってのに。 「来客です。来客です。起きてください」  初めは控えめだった機械的な声が、どんどん音量を増していく。眠りの世界に戻りたいのに、耳にガンガン響く音が覚醒まで強制的に導く。 「だからうるさいって! なんなの!」 「おはようございます。来客です」  光るモニターが目に痛い。これだから安物の家に付属するAIは、と思いながら、目を細めてパネルのモニターを見る。ぼやけた視界が鮮明になっていく。来訪者の顔をはっきりと認識した瞬間、俺の意識は急に覚醒まで浮上した。 「はっ!? あ、アルテミス!?」  そこに映っていたのは、俺が誰より敬愛するあの人だった。  瞬きを何十回も繰り返す。いや、本物だ。何度見たと思ってる。あの、ライオンのたてがみのように靡くブロンド。  まるで現実味がない。民営放送を見ているみたいだ。 『やぁ、開けてくれないか? 君を特殊部隊に勧誘しようと思って来た』  アルテミスの声だ。前にヒーロー解説番組でコメントしていたときの、あの声と全く同じ。 「えっ……」 『うちの能力探索チームは有能でね。君から強力な超能力のオーラが発現しているのを感知したんだ』 「……そんな」  まさか。  煌めくあの瞳を思い出す。あの少年のことは、てっきり変な夢だと思っていた。いや、これも夢なのか? 『突然こんなこと言われても、混乱するだろう。だが、話だけでもさせてほしい。我々、特殊部隊は常に人手不足なんだ……』 「えっ」 『突然押し掛けて、失礼を承知で頼みたい。我々、ヒーローを助けて欲しい。君の類稀な能力で』  なんだこれは。きっと、夢の続きだ。だって、ありえないだろう。この俺を、あのレジェンドヒーロー・アルテミスが必要とするなんて。 『頼む、扉を開けてくれ』  でも、もしそんなことがあったら。もし、このどうしようもない俺が、アルテミスみたいな凄い人の助けになれたら、悪を挫き弱き者を助ける、そんなヒーローになれたら。  そんなの、願ってもない。 「……ドアを開けて」 「承知いたしました」  ドアがスライドしていく。開いていくと同時に、俺の心臓の鼓動は加速する。  あ、入ってくる。重い足音。 「……開けてくれありがとう。はじめまして。陸軍特殊部隊少佐アルテミス・ダラントだ」 「っあ、う」  本物だ。画面の中じゃない。正真正銘、俺の目の前に、俺のこの狭い部屋の中に、あの光るネオンの下で輝く黄金の獅子が、いる。  でも、おかしいのだ。  あの獰猛な獅子のようでいて、正義の炎に燃えたあの目は、こんなに冷たく、凍えるような目だったか? 「やっぱり、探索班の情報を信じてここまで来た甲斐があったよ。最近は不発続きだったからな……」 「え……?」 「いや、こちらの話だ。素晴らしい念動力の素質だ。鍛錬すれば、私さえも超えるかもしれない」 「えっ……!」 「まあ、()()があればの話だが」  それって、どういうことですか。そう口を開く間もなく、アルテミスは腰に手を置く。拳銃だ。アルテミスはそれを取り出して……。  え、なんで。アルテミス、どうして……。  向けられた黒い塊。その冷たい空洞から目が離せなくて。  ドッッ  
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