王女の選択

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 エリザベスは森をぬうようにして走っていた。2つの技能を駆使して速力を上げているため、普通の者には目にも止まらぬスピードだった。  森の奥深くにまで入り、洞窟を見つけて身体を落ち着けた。  もう誰もいない。行くところも他にない。ここにいれば狙われてしまう。お父様とお母様の、国の迷惑になるのなら、自害は免れまい。  エリザベスは洞窟の中で心を鎮め、一人決心を固めると、洞窟から出て谷の方へと向かった。  森の奥には深い谷がある。谷底には急流が流れているため、身を投げうてば助かることはないだろう。    エリザベスは以前に山賊の仲間から身を売られたときのことを思い返していた。その時はバンパが気づいてすぐに対処をしてくれたが、仲間から裏切られた傷は癒えぬまま残っていた。  裏切った仲間が最後にその理由を問われたとき、彼が言った言葉が忘れられないのだ。  『エリザベスは、王女は化け物だという話だ。このまま仲間として側にいれば、いつもの小競り合いとは比較にならないような攻撃を受けて、俺たちの方が死んじまう! 仲間のために先に手を打とうとしただけだ』  その言葉通りバンパも、仲間たちも多くが死んでしまったではないか。  その身を守れるようにと強く鍛えてきたが、自分の周りにいる者はそのために被害を受けてしまうのだ。一人で生きていけばいいと言っても、一人の人生なんて、そんなものを送るくらいなら、いっそ終わりにしたほうがいい。
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