山賊の入城

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 食べ終えてまどろんでいると、ドアがノックされた。 「どうぞ」  エリザベスが声をかけると、両親が部屋に入ってきた。 「……お父様、お母様」  両親の姿を10年ぶりに見たエリザベスは、意地を張って会うまいと決意していたことも忘れ、父母の腕に飛び込んだ。 「エリザベス」 「リズ」  両親は涙を浮かべながら娘を受け止め、三人はしばし喜びに浸った。 「10年前、お前が(さら)われたときは、もう二度とこの腕に抱くことはできないと諦めかけていたよ」  父がエリザベスの肩に手を置いて声をかけた。 「お前を失ったと思って私たちは絶望していたわ」  父の横に立つ母もそれに続いた。 「お父様、お母様、お会いできて嬉しく思います」  とめどなく溢れる涙を押さえるように両手で顔を覆っていたエリザベスは、涙を堪えて両親の方へ顔を向けた。 「(さら)った本人だが、お前を無事に生かしていてくれたのか」  父がエリザベスに話をさせようと誘導し始めた。 「そうです。私が自ら進んで彼らの仲間になりました」  エリザベスは父の意図に応えて言った。 「そうするしかなかったのであろう。6歳の少女にしてその機転はさすがだ」
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