山賊の入城

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 エリザベスは返答に躊躇した。  ここで意地を張り続ければ、仲間たちの不問が取り消されてしまうかもしれない。しかし、おいそれと王女の立場へと戻ることもできない。  そのエリザベスの逡巡を見て取った父は、笑顔を見せて言った。 「まずはゆっくり休みなさい。私たちにも好きな時に会いに来るといい。街の中も久しぶりに歩いてみたいだろう。立場はどうだとしても構わないから、単にエリザベスとして好きなところへ行き、好きなように過ごしていればいい」  父は、バンパの怪我が治るまでは娘も遠いところへ行かないだろうと判断し、娘の気が落ち着くまで待とうと思ったのだ。10年も山賊として生きてきたのだから、簡単には王女としての自分に戻ってこれまい。無事に帰ってこれたのだから、後はゆっくりと落ち着いてくれればいいと考えた。 「ありがとうございます」  エリザベスも父に笑顔を見せると、母とも視線を合わせ、再び抱き合った。  退室しようとしたときに、父は振り返り、エリザベスに注意を促した。 「どこへ行っても構わないが、城から出るときは、それが中庭であっても、必ずヒューバートに付き添ってもらうように」  エリザベスは父の言葉に不服の表情を返した。 「それだけは譲れん。絶対にだ」  エリザベスの表情に気がついたが、それだけを言い残して去っていった。
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