王女の護衛

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 バンパは(せい)だった。山賊や盗賊、物乞いなどの他人の物に頼って生きねばならぬ者達は皆、(せい)という、生存に特化した技能を持たなければ生き抜いていけないのだ。  水や食べられるものがある場所を知ることができたり、危険な草花や動物を察知することもできる。飲まず食わずで10日は生きられるようにもできるし、磨くほど様々な能力を得ることができる。  (さく)は工作のことで、材料から様々な物を作ることや、無から有を生み出すようなことまで色々なものを作る能力を言う。  (のう)は農耕、牧畜など、動植物をコントロールする術に長ける。  (えん)は娯楽の提供だ。音楽や書物、演劇や道化芝居など、あらゆるパフォーマンスの能力を得る。  エリザベスが使ったのは(とう)(のう)を組み合わせたものだった。身体のスピードを上げるには(とう)が必要だが、消えるほどのスピードには、(のう)の能力を使って動植物をコントロールしなければ到達できないのだ。  クリストファーの動体視力と知識、洞察力があってこそ気づけたものだった。  つまり王女は、稀にしか生まれないという、5つの技能全てを操ることのできる、特別な才能を持つ人物だということになる。  そうでなければあの若さで2つの能力を磨くなど到底無理なことである。  その理由から王女は狙われているのだと、クリストファーは気がついた。  王が、王女の護衛として自分を指名したのはそのためだったのか。  いくら(さら)われた経緯を持つ王女だからといって何故騎士団長の自分が任命されるのか、今日までわからなかったのだ。   「これは、思っていたよりもやっかいなことになりそうだ」  クリストファーはそう独り言ちた。
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