王女の護衛

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「私よりは弱いわ」 「ふん、それはそうだろう。しかし、お前にはないものを持っている。お前にはできないことができる男だと思う」 「バンパ!」  バンパがふざけているのだと思ったエリザベスは、真面目な話だということを強調するためにそう声を荒げた。 「本音だ。本当にそう思う」  そう言ったバンパの目をじっと見つめたエリザベスは、目の中に嘘はないことを確認した。 「そう。それじゃあ、本当にバンパは私にここに留まれと言うの?」 「……そうだ」 「バンパは?」  6歳の頃のように不安気な表情をバンパに向けたエリザベスを見て、バンパは答えることに躊躇した。 「わからない。治ってから考えるさ」 「バンパもここにいるんでしょう?」  さらに不安気な表情を強めたエリザベスの声は、いつもの彼女からは考えられないほど弱々しい。  数秒、黙ったままエリザベスの目を見つめていたバンパは、視線を逸らしてから言った。 「王様たちが許してくれるのならな。それくらい許してくれるだろう。恩赦もしてくれたようだし」 「そうね! 私もお父様にお願いしてみる!」  エリザベスは瞬時に明るい表情に切り替わり、満面の笑みで喜びの声を上げた。 「とりあえず身体を治してしまわにゃならん、もう一度寝かせてくれ」  バンパは力なくため息をつくと、目を閉じて眠る体勢になった。 「そうね、わかった。ゆっくり休んで」  エリザベスはバンパを力づけるようにそう言うと、静かに退室した。
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