王女の護衛

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「エリザベス様、本日は散歩に向かわれないのですか」  エリザベスが日課にしている散歩兼訓練の時間になり、クリストファーはお供するべくエリザベスの部屋へと迎えに来たところだった。 「そうよ。これを見てわからない? 今日はあなたとお喋りでもしようかと思って」  エリザベスはテーブルに広げたお茶と焼き菓子を手で示しながら返事を返した。 「お喋りですか?」  力を鍛えることしかしてこなかったクリストファーは、そんな時間の使い方があるなんて想像したこともない。 「そこに座りなさい」  自分の対面の席を指差してエリザベスは命令した。  クリストファーは素直に従うと、椅子に腰を下ろした。 「作法なんていいから、まずはそのお茶を飲んで菓子を味わいなさい」  クリストファーは言われるがまま、触れたら割れてしまいそうなほど繊細な造りのカップを、その無骨な手で持った。  大柄なクリストファーが持つカップはミニチュアのようだったが、おそるおそると(すす)る姿は可愛らしい。  エリザベスはそれを見て思わず笑みを漏らした。 「ねぇクリストファー、あなた結婚はしているの?」  エリザベスは焼き菓子を頬張りながら早速お喋りを始めた。  意表を突く質問にクリストファーはお茶を吹き出した。 「あら、もったいない」  エリザベスはすんでのところで飛沫を避けて、済ました調子でそう言った。 「してないでしょう。見た目は悪くないけど無骨すぎるもの。もっとこう柔軟さみたいな、女性の手をとって違和感がないようにできないものかしら」
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