王女の護衛

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「わかりました。喧嘩を売るなら買いましょう」  そう言って立ち上がり、クリストファーを睨みつけた。 「申し訳ございません。そんなつもりはありませんでした」  クリストファーは心底心外だという表情を見せて、慌ててそう返した。 「どういうつもりですか? そんなことを言われたら頭にくるのは当然です!」  エリザベスはクリストファーに掴みかからんばかりの勢いで立ち上がった。  テーブルも椅子も気に留めぬままいきなり立ち上がったせいで、身体がテーブルに当たり、上に乗っていたお茶のカップとティーポットが倒れた。  怒りで我を忘れていたエリザベスはそれに反応するのが遅れ、まだ熱いままのお茶を被りそうになった。  エリザベスが意識をそちらへ向けるよりも早く、クリストファーは反応し、エリザベスの腕を掴んで引き寄せた。  エリザベスからあと一歩というところでカップとティーポットは床に落下した。  無言のまま、落下していくカップとティーポットを目で追っていた二人は、床に散らばった残骸を見つめたまま動きを止めていた。  クリストファーはエリザベスの腕を掴んだまま、自分の方へ引き寄せていた。  エリザベスは、クリストファーに掴まれた腕と引き寄せられた身体に彼の体温を感じて身動きができなくなっていた。  何度も男性に触れたことはあるが、物心がついてからは戦う時にしか触れたことがない。  今初めて、いわゆる普通の状態で男性に触れている。エリザベスは戦士としてではなく成人した女性として、そう自覚して戸惑った。
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