首領の行方

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「なんでもない。明日のために意気込んで無茶するんじゃないかって心配しただけだ」  バンパの意図を聞いて安堵したエリザベスは緊張を緩めた。 「そんなこと。大丈夫よ。無茶なんかしない」 「わかってる。じゃ、また明日」  バンパはエリザベスから視線を外して片手を上げると、ベッドへと潜り込んだ。  エリザベスはバンパの態度が気になったが、休もうとしたバンパにそれ以上追求することはできず、退室した。  そのままエリザベスはクリストファーを引き連れて散歩へ出かけると、日課である特訓のために広場へと向かった。  三度手合わせを終えた二人は、草の上で横になり、身体を休めた。 「クリストファーはバンパと話すことはあるの?」  エリザベスがストレッチをしながら聞いた。 「男同士のお喋りですか?」 「もうそれ止めない?もう二度とあんなことしないから」  エリザベスは怒り声を出した。  いつもは無表情のクリストファーが笑いを堪えている姿を見て、エリザベスはさらに激高した。 「ふざけないで! 真面目な話なのよ!」 「申し訳ありません」  クリストファーはそう言いながらもまだ口の端が下がりきらずにニヤニヤと笑っていたが、エリザベスの鋭い視線に気圧されて表情を正した。 「ほとんど顔を合わせませんので、話すことはしません」 「そう。なんか変だったのよね」  そう言って視線を宙に彷徨わせたエリザベスの表情は、6歳の子供のように幼く見えた。 「明日になったら特訓した成果をバンパに見せるのよ。もう少し練習しておかなくちゃ。さあ、立ちなさい!」  エリザベスはいつもの表情に戻ってハキハキと大声を出した。
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