首領の行方

4/4
前へ
/52ページ
次へ
「存じません」  正直者のクリストファーは、エリザベスの鋭い視線を真正面から受けることが出来ずに目を逸らして応えた。 「知っているのね?」 目を逸らした仕草から嘘を見破ったエリザベスはさらに一歩近づいた。 「存じませんと申し上げました」  そう言ったクリストファーは、逸らしていた視線をエリザベスへ戻したが、それは逆効果だった。クリストファーの目の中に嘘を見たエリザベスは確信を強めてにじり寄った。 「話しなさい!王女からの命令です」 「山賊なのではなかったのですか?」  クリストファーは冗談めかしてそう言ったが、表情には狼狽えた様子が浮かんでいた。 「クリストファー!」  エリザベスがそう怒鳴ると、クリストファーは観念した様子で答えた。 「バンパは死にました」 意表を突かれる返答にエリザベスは面食らった。 「クリストファー! 冗談を言っている場合ではないの!」  エリザベスは激昂したが、クリストファーは視線を逸らしたまま、王女を(おもんばか)る表情を浮かべている。  それを見たエリザベスは、その言葉が冗談ではないことに思い至った。 「嘘でしょ……なんで」 「バンパの受けた矢には解毒のできない毒が塗ってありました。治療を受けた時にはもう助からないことがわかっておりましたが、エリザベス様に気づかれないようにと、王国一の治療師によって鎮痛作用のある技能を用いられ、回復していたように見せかけていたのです」  もう陽が沈みかけ、広場の人通りも少なくなっていたところにエリザベスの悲痛な叫びがこだました。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加