王女の選択

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王女の選択

 特赦を賜った山賊の仲間たちは、首領を失ったことで一味は解散し、街に留まることに決めた。王の計らいで仕事も与えられ、宿屋を出て家を借りることもできた。  街中から少し離れたところにある墓地に、山賊の残党たちは集まっていた。エリザベスと共にバンパを見送ったあと、そのうちの一人がエリザベスを元気づけるように言った。 「バンパは山賊としてではなく、いつか王女として戻れるようになって欲しいと願っていた。山賊のままエリザベスを置いておくことはできないだろうと、よくそう言っていた。ここへ来た時も、これでようやくエリザベスは帰ってくることができたと言って安心していたようだったよ。バンパのその気持ちを汲んで、エリザベスも城に留まって王女に戻った方が良い」 「バンパはここに眠っている。いつでも見守ってくれているんだ」  そう言い残して皆街中へと去っていった。  エリザベスはバンパの墓を見つめたまま立ちすくんでいた。その様子を、後ろに3メートル程離れた位置でクリストファーが見守っている。 「今更どうやって王女に戻れというのよ。王国が私を守れるとでも言うの?バンパに(さら)われることなく、あのまま王女としてここで育っていたら、もっと若い時に殺されていたか、別の悪党に(さら)われて悪用されていたに違いない。バンパのお影で、私は私という誇りを失うことなく大人になることができた」  エリザベスは独り言のようにしてクリストファーに聞かせている。
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