王女の選択

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「もう私には頼る人がいない。私一人で自分を守らなければならない。でも何のために? 敵から自分を守ることが人生なの? そんなの生きている意味があるの?」  エリザベスの慟哭にクリストファーは思わず言葉を発した。 「王様と王妃様がいらっしゃるではありませんか! 王女として国の未来のために生きられるのです」 「私はむしろ戦争の火種になるだけの邪魔な存在だわ。お父様もお母様も国の民も、私の存在を疎む日が来る」  エリザベスは頭を抱えて目には涙を浮かべている。 「私一人では自分を守りきれないわ! いつかは捕らえられ、国の脅威になってしまう」 「私がお守り致します」  クリストファーは声を上げて言った。 「私よりも弱い者が私を守ると言うの?」  エリザベスは反論する。 「あなた以上に強くなります」  クリストファーは真剣な目を向けて力強く言った。  エリザベスはそんなクリストファーを見ながら力なく笑うと、首を横に振った。 「山賊たちは私をいつでも殺すことができた。でも、そうはしなかった。だから信用を置くことができた。この国では誰が敵の手にかかって私を捕らえようとするかわからない。国の王女なのに、そう疑いながら生き続けることは死ぬことよりも苦しいわ!」  エリザベスは悲痛な声を上げた。言葉を返せずエリザベスを見つめていたクリストファーから、顔を見られまいとして後ろを向いた。 「敵の手に落ちる前に、私はその脅威を排除する」  エリザベスはそう呟くと森の中へと走り出した。 「エリザベス様!」  エリザベスの突然の行動に意表を突かれたクリストファーは慌てて追いかけるも、エリザベスの全速力には敵わず、その姿を見失ってしまった。
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