王女の選択

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 エリザベスは谷の縁へと歩み寄ると、目を閉じて力を抜き、身体を宙に預けた。  その瞬間、目も眩むような閃光が、閉じた目からもわかるほどの光が目の前に広がった。一瞬送れて耳をつんざくような轟音が鳴り響いた。  手足に何かが絡まるような感覚がある。  目を開けると、身体が縄に捕らえられ、下へではなく斜め上へと引っ張られている。  エリザベスは縄から逃れようとしてもがくが、その縄はエリザベスの力を持ってしてもピクリとも動かない。特殊な技能が使われているようだった。  敵の手に落ちた!  そう考えて焦り、必死になってもがいていると、聞き覚えのある声がした。 「エリザベス様、少し落ち着いてください」  クリストファーの済ました、いつもの平静な声だった。 「クリストファー!?」  エリザベスは驚きの声をあげた。 「あなたをお守りすると申し上げたでしょう」  クリストファーは片方だけ口の端を上にあげると、目の前のことに意識を戻した。  エリザベスを抱えたまま安全な場所を目指して崖を駆け登っている。  爆音とともに二人の周りを閃光の光が包む。爆撃が二人を狙っているのだ。
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