王女の選択

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「この縄を解いて!」  エリザベスは叫んだ。 「飛び降りるなんて馬鹿な真似を」  クリストファーは谷の縁へたどり着くと、エリザベスを地面に下ろして言った。  まだ二人の周りには爆撃が降り注いでいる。  クリストファーは素早い動作で剣を引き抜くと、エリザベスを捕らえていた縄を切った。そのままその剣を振りかざし、谷の縁から飛び出てきた敵を斬り倒した。  エリザベスもすぐさま応戦し、次々に襲い来る敵を迎え撃つ。 「こういう事態になる前に、私自身を消してしまおうと思ったのよ」  二人は背中を合わせて攻防を続ける。 「何度襲われても、抗えばいいことです。あなたの存在価値は能力だけではないんですよ」  クリストファーはそう言うと、剣を両手に持って飛び上がり、巨大な砲台を乗せた馬車に立ち向かった。 「クリストファー! 危ない!」  一際大きな音が轟いたと思うと、馬車もろとも敵を薙ぎ払った。  クリストファーは一度の閃撃で多くの敵を攻撃することができる。  エリザベスは見たこともない攻撃の技術に目を丸くした。  エリザベスも傷一つ受けることなく応戦していたが、あんな真似をできるとは思えなかった。数人相手の敵と戦う術しか知らず、あんな大きなものを打ち倒す経験もなかったのだ。
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