王女の選択

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 幾日も共に訓練してきた仲だからか、互いの攻撃のタイミングも呼吸だけで理解することができ、意思疎通をせずとも相手の考えを読むことができた。  まるで何年も共に戦ってきた相棒のように息を合わせ、二人はキリがないほどに襲い来る敵を冷静に倒していった。  相手の攻撃がやんだ一瞬の隙をついて、二人は合わせたかのように同じタイミングで森の奥へと駆け出した。  二人の最高速度に敵う者はいなかった。全速力で方向を変えながら走っていると、敵の気配がないところにまでたどり着くことができた。  さすがに息を切らせたエリザベスは、共に立ち止まったクリストファーの様子を伺うべく息を整えながら視線を向けた。  クリストファーはあちこちに傷を負い、血を流している。 「クリストファー」  エリザベスが不安そうな声をかけると、 「傷は深くありません」  クリストファーはそう言って応急処置をし始めた。 「あまり長く休むことはできません。どれだけの数なのか、どこまで来ているのかを把握しなければなりません」  クリストファーは息も絶え絶えにしてそう言った。 「わかったわ」  エリザベスは(のう)の力を使って、森の動植物と意識を繋げた。 「敵は残り30名ほど。かなりあの場で倒せたようね。砲台は残り1台。どこの国からの者かしら。あんな装備を持っているとなると、そこらへんの小国ではないでしょう」  エリザベスは冷静に分析をした。 「その傷を与えた武器に毒は塗ってなかったかしら」  エリザベスはバンパのことを思い出して不安げにそう聞いた。 「わかりません。普通の傷のように思えますが」  クリストファーは応急処置を終えて立ち上がっていた。
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