王女の選択

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「見せて」  エリザベスはクリストファーの腕を取り、巻いたばかりの包帯を解く。  目を凝らし、今までしたことはないが理論的には可能だろうと思い至った技を試した。  しばらくジッとそのまま身動きもせずにいると、いきなり顔をあげてクリストファーを仰ぎ見た。 「多分大丈夫。この間の敵とは違うみたい」  クリストファーはエリザベスの動作をされるがままに見つめていたが、彼女の特別な力がどのように働いたのかは理解できなかった。 「騎士団を呼べないの?」  エリザベスは包帯を巻き直しながら聞いた。 「呼びました。先程既に近くにまで来ておりましたが、敵の追っ手も来ていたようでそちらと応戦していたようです。先ほどエリザベス様が仰っていた人数はあの場に残った数と同じ程度でしたので、追っ手を既に倒せたのかもしれません」 「え……でも、騎士団の気配を感じることができないわ」 「我々の中にも気配を自然に溶け込ませることのできる者がおりますので」 「じゃあ、敵にもいるんじゃないの」 「その通り」  エリザベスが言った瞬間、背後から敵の声がしたと思うと既に取り囲まれていた。 「王女様は山賊でいらしてご経験が少ないことと存じますが、山賊連中のレベルとは全く別の次元の能力がたくさんあるんですよ」  最強の騎士団長と特別な力を持つ王女に多くの仲間が倒されたというのに、その敵の声には余裕があった。
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