王女の誤算

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王女の誤算

 クリストファーの表情を伺うと、冷静だが目の中には狼狽が見て取れた。敵は想像以上だったようだ。 「助けは来ないぜ。騎士団の連中も、もう眠りについた頃だ」 「城の方も自分たちで精一杯だろうよ。宣戦布告がなされたからな」  敵の声は面白がっていることを隠していなかった。 「何が目的です?」  エリザベスは主に話をしている一人を睨みつけてそう言った。 「何が目的です? 決まっているではありませんか」  そう言うとエリザベスの方へ人差し指を向けた。  エリザベスは一瞬怯んだが、すぐに覚悟を決めて言った。 「わかりました。それでは全てを終わらせなさい」 「そう簡単に全てを終わりにするなんて、できるわけがない。宣戦布告をしたからには、どちらかが勝つまで終わらない」  敵は不敵な笑みを絶やさない。 「そちらもただでは済まないでしょう。目的のものが得られれば簡単に済むのに、なぜ国まで落とそうと言うのか?」  エリザベスの声は言い終わるときには悲痛な叫びになっていた。 「そんなものは馬鹿でもわかる。王女を手にしたところで何の意味もない。ただ肥やすだけの人間を置いておくことに何の意味があるというのだ? 王女の技能を利用することで初めて価値が生まれるんだよ。えぇ、王女? こちらには既に優秀な魔道士がいる。人間の意識をなくして、その力だけを使わせることのできる技能というものがあるんだよ。手に入れたらそのおもちゃが使えるのかどうか、試してみなくては価値もわかるまい。そうだろう?」  敵は陰湿な笑みを浮かべて、絡むような口調で言った。
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