王女の誤算

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 エリザベスは勘違いをしていたことに気がついた。自分の特別な力に囚われ過ぎていて、敵の目的は自分を捕らえることだと、そこまでしか考え至っていなかったのだ。そもそも自分は目的でもなんでもなかった。目的のための数あるうちの一つの手段に過ぎないのだ。そのために狙われているのではなく、自分がいなくても国は狙われていたのだ。 「どう足掻いてももう全ては手遅れだ」  敵はそう言うと、片手をあげて仲間に合図をした。  敵たちの中から一人の魔道士が現れ出てきた。 「技能を使うには、対象に触れていなければなりませぬ」  そう言ってエリザベスへ近づこうと一歩踏み出した。  魔道士の叫び声が鮮血と共に宙を切り裂いた。 「エリザベス様に手を触れるな」  そう言葉を吐くと、クリストファーは剣を掲げ持った。  クリストファーに斬られた魔道士が地面に倒れると、それを乗り越えてクリストファーは敵に向かっていった。  エリザベスは混乱していた。どうすればいいのかわからなくなっていた。街へ戻りたいが、ここを抜け出せるのかもわからない。
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