王女の誤算

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 エリザベスは涙を流していた。  自分さえ犠牲になれば済むと思っていたのに、そうではなかった。敵の力も甘く見ていた。エリザベスが考えるよりもずっと強大だった。自分の特別な力を持ってしても、敵う相手ではない。もうお終いだ。国も両親も何もかも、全て敵の手に落ちてしまうのだ。  肩を落として地面に両手をついたエリザベスは、それでも戦い続けるクリストファーの姿を涙でぼやけた瞳で見つめていた。  クリストファーもここで死んでしまうのかもしれない。  私よりも弱いと思っていた男が。私よりも強かった男が。ここで死んでしまう。  諦めずに敵に挑みつづけて殺されてしまう。  そうだ。クリストファーは諦めていないのだ。  そう考えていたエリザベスの目に、流れ落ちて視界がクリアになった目に、クリストファーの視線が合わさった。  彼は私を気にかけている。こんな大勢の敵の中で諦めず、まだ私を守ろうとしてくれているのだ。  エリザベスは奮起した。クリストファーに守られたまま、何もしないまま彼だけを死なせるわけにはいかない!
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