王女と騎士

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王女と騎士

 5つの技能全てを操れるようになったクリストファーはエリザベスの期待以上だった。  エリザベスもバンパと鍛え続けてきたとは言え、長い伝統を誇る王国一の騎士団の訓練とは(わけ)が違ったのだ。  ましてやクリストファーは、その中でも最も優秀な騎士団長に抜擢された男なのだ。そのクリストファーにエリザベスが勝っていたのは、特別な力のためだった。それでも負けることはあったほどなのだ。  その特別な力を手にしたクリストファーは名実ともに王国一、いやどの国を合わせたとしても敵わぬほどの強さになっていた。  エリザベスとクリストファーは、敵がこれまで一度も見たことがない技能の合せ技を繰り出した。  誰もそのスピードを見切れる者はいない。  劣勢だと思っていたのも束の間、二人だけで多くの強大な敵をあっという間に打ち倒してしまった。  二人は倒し終えても休むことなく街へと駆け出した。国の民を、王と王妃を助けなければならない。 「クリストファー」  エリザベスは並んで走っているクリストファーに声をかけた。 「はい」  クリストファーは応える。 「あなた、言ってくれたわよね。私の価値は技能だけではないと」 「申し上げました」 「あなたにもその力が分け与えられたとなると、私を特別たらしめていたものはもうなくなってしまった。王女であるという以外に、私にある価値とは何?」
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