王女と騎士

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 街の外は焼け野原であったが、街自体は死守されいていた。騎士団だけでなく、王の衛兵や民兵たちも協力して、街へ入るための門を守っていた。  味方も敵も入り乱れた状態で、あちこちに死傷した兵士たちが倒れている。 「騎士団長だ!」 「クリストファー様だ!」 「王女様もいる!」 「エリザベス様!」  戦況は、あと一歩のところで最終防衛線が突破されるというところまできていた。そんな時に騎士団長と王女の帰還だ。兵士たちは二人の無事を見ると、消えかかっていた士気が再び燃え上がった。 「皆よくやった! 敵の半数以上は打ち倒した! これが最後の踏ん張りだ! 行くぞ!」  クリストファーがそう声をあげると、兵士たちは声を揃えて雄叫びをあげた。  先陣を切って騎士団長が駆ける。負傷と疲労をものともしないその俊敏な動きに、味方はもちろん敵すらも驚いた。  エリザベスも猛る。王女の戦闘能力を知らなかった多くの兵士たちは、自分たち以上に強い王女の姿に畏敬の念を覚えた。  エリザベスは持ち前の頭脳を駆使して、敵と味方の位置と能力を察知し、機敏に指揮を取った。  その威厳のある物言いと、反論の余地のない作戦に、兵士たちは即座に彼女を指揮官と認め、全ての者が従った。
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