王女と騎士

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 エリザベス自身も兵士たちと共に最前線で戦った。エリザベスの特異な戦い方に慄いたのは、敵だけではなかった。  エリザベスの特別な力に気がついた手練れの者たちが口々にそれを周りに伝えていく。  彼女の特別な能力とその実力を知った兵士たちは、この戦いに希望を見出した。  騎士団長の強さは皆の知るところであったが、今日の団長はいつもとはまるで違っていた。  スピードも、繰り出す攻撃も段違いの強さであり、見たこともないような技を駆使して次々と敵を倒していく。  これまでの団長の強さとは比較にならないほどの力を身につけていると、皆に知れ渡るのに長くはかからなかった。  王女と同様の技能を見た者たちは、その使い手が一人ではなく二人、しかも王女と騎士団長がその能力を持っていることを知ると、この戦争は自軍の勝利だと確信した。  そう悟った兵士たちは、自らの命も顧みず、雄々しい士気で敵に立ち向かった。  その攻撃を受けている敵軍は、自軍がやや優勢で、あと一歩で打ち破れると思って戦っていたはずが、王女と騎士団長の帰還で息を吹き返しただけでなく、戦い始めた序盤よりも力強く、意気軒昂と立ち向かってくる王国軍を見て怯んでしまった。  兵士たちの士気が変化していくと、勝敗はあっけなく決まった。  勝利を確信した側と、慄き怯んだ側とでは既に勝負にならなくなっていたのだ。
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