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「エリザベス王女、お怪我はございませんか?」
バンパを矢から庇っていた男がエリザベスの隠れている木の方に向かって声をかけた。
バンパは左肩を押さえながら片膝をついた。
「お前たちは騎士団か?」
男を見上げ、肩で息をしながら、そう聞いた。
「そうだ」
男は、エリザベスにかけた声質とは全く違う鋭い声を返した。
「どうする気だ?」
「お前は捕らえる。お尋ね者の山賊だからな。王女は王の元へお連れする」
木の裏から、バンパを助け出すためには相手をどう攻撃しようかと見定めていたエリザベスは、その言葉を聞いて驚いた。
そして、隠れることを止めて男の前に姿を現すと、轟くような声で言った。
「私も山賊です。その男と共に捕らえなさい!」
姿を見せたエリザベスを見て、その男は目を見開いた。
身に着けているものは山賊そのもののような粗末なものだが、輝く金色の長い髪と、意思の強い青い瞳、王妃に似てふっくらと形のよい赤い唇に、健康そうに引き締まった長い手足は、山賊のそれらと大いに違っていた。
そのちぐはぐさは、むしろその美を引き立てていると言わんばかりに自然で、とても美しかった。
圧倒された男はしばしたじろいだが、再び穏やかな声でエリザベスに向かって諭すように言った。
「承知致しました。それでは我々とご同行をお願い致します」
エリザベスはその言葉を受けて、バンパと視線を交わしたが、バンパの無言の同意に頷くと、肩をそびやかして歩き始めた。
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