山賊の入城

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山賊の入城

 エリザベスとバンパ、それに生き残った数名の仲間たちは騎士団に連れられて、城下町であるディオグラートへと到着した。  バンパは出血多量で歩くことができず、応急手当をされたあと、王女のためにと用意されていた馬車の中で眠っていた。エリザベスは馬車に乗ることを拒否したが、側で怪我の具合いを診ていて欲しいとバンパに頼まれ、しぶしぶと言った形で同乗したのだった。  父と母である王と王妃が娘の帰還を喜び城へ招いても、エリザベスは牢獄のベッドに横たわるバンパの側を離れようとしなかった。  バンパの怪我は療養していればすぐに治る程度だったため、王は我が子の意思を受け入れて、バンパに城の一室をその療養の場として与えることにした。バンパは仲間たちに気を使ってそれを固辞しようとしたが、仲間もしばらくは不問に付すとの王からの勅令で、見張り付きではあるが、牢屋ではなく街の宿屋に滞在させる許可が与えられた。  バンパを守り、エリザベスに声をかけた男はこの国の騎士団の団長で、クリストファー・ヒューバートと名乗った。 「失礼いたします」  クリストファーがバンパの部屋の入口でそう言うと、許可を得ずに入室した。 「エリザベス王女は」 「王女ではありません」  クリストファーを睨みつけていたエリザベスは、そう言って相手の言葉を切った。
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