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元の世界に帰ります
進藤未来、15歳。
それなりに楽しくて充実した毎日を過ごしている中学三年生……だったはずなのに。
朝起きたら目が見えなくなっていた。
あわてて目を擦っても、視界は真っ暗なまま。
「え? 何? あ、声が違う!」
頭や頬に手を当てて撫でると、顔の形や髪の長さも違った。
こんなのもう、別人だ!
しかも私の部屋じゃ、ない?
だって匂いが違う。
いつもなら潮風が磯の香りを運んでくるはずなのに。
この部屋は木の匂いが強くて、『異世界の扉』を開けた時に感じた獣臭も混じっている。
「そうだ……異世界の扉」
同い年の幼馴染、創始に『異世界の扉』を見せてやると誘われて、着いて行ったんだ。
海辺から少し離れたところに、木の生い茂る場所がある。
小学生のころ秘密基地を作った場所で、もう枝葉の残骸しかないそこにポツンとピンクの扉が置いてあったのだ。
「うわマジでドラえもんじゃん」と大笑いした覚えがある。
でもアニメとは違って鍵がかかっていた。
創始が鍵を開けてから――の記憶がない。
もしかして、あのとき私は死んだのかな。
そして扉の向こうにあった異世界に転生して、違う誰かになってしまったのかな。
「いやいや。異世界転生とか本当にあるわけ……」
落ち着けと深呼吸を繰り返していたら、外でベルの鳴る音に続いて「ごめん下さい。魔法薬師の巡回です」と声を張る男の人の声がした。
ふーん魔法、ね。異世界転生、決定かな?
というか転生したら盲目ってハードル高すぎない?
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