化け物

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「何のきっかけで扉や鍵を見つけたのかは忘れた。ただ、あの化け物をミラに見せてやろう、驚かせてやろうと考えて呼びに行ったのは覚えている」 「私、嫌われてたの?」 「好き嫌いでなく……なんだか癪に触ってたんだよな。今思うと思春期ってやつ。泣き顔が見られたら清々すると思ったんだよ」 「はあ」  思春期というよりお子様なだけなのでは……なかなかに拗らせてたんだなあ、と呆れてしまう。 「化け物も一度目は引っ込んだから、攻撃はしてこないと油断してたんだけど……そいつは強くて、世界を滅亡させた。気がついたらクリムに転生していたんだ」 「その化け物が、今の私ってこと?」 「ああ。俺はクリムとソウシを交互に繰り返している。ミラは、人間と化け物を繰り返している」 「交互に? 何回も転生してるの?」 「数えるのが面倒になるくらいは」 「なんで? 止めなかったの?」  ちょっと頭の整理が追いつかないけど、要するにクリムさんか創始が扉を開けなければ、世界は滅びないで済むんじゃないだろうか。 「創始の時は、何も覚えてないんだよな。クリムに転生してから絶望する」 「クリムの時はもっと簡単じゃん。扉を放っておけばいいんだもん。今回だって、異世界の扉が見つかったなんて私に教えなければよかったのに」  なんだか矛盾している。クリムさんの……創始の狙いが分からない。   「まあな。俺もいろいろ考えたよ。時間だけはあったし。で、ソウシとして続きの時間を生きたいって結論を出した」 「えーと、創始として生きている時は、扉やクリムさんだった時の記憶がないんでしょ?」 「ああ」 「無理ゲーじゃん?」  記憶がなければ、同じ過ちをずっと繰り返すのは仕方ない。  何回だって私を呼んで、扉を開けてしまうんだろう。  はてなマークばかりの私に、創始は座るように言った。  草の上に腰掛けると、青々とした緑と土の匂いが近くなる。 「……前回までのミラがさぁ」 「私?」 「記憶はないくせに、異世界の扉については毎回さわぐんだよ。こんなつまんないところ抜け出して、夢で見た世界に行くんだってな。なんかそれ見てたら、猪突猛進が移った」 「どういうこと?」 「ここでクリムとして生きるのは嫌だと思ったんだ。そんな消化試合をするくらいなら、勝ち目がゼロに近くても挑んでやろうって。繰り返すうちに未来が変化するかもしれないと信じて、賭けた。ミラとソウシで、元の世界の続きを生きたかったから」
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