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そうか、とやっと腑に落ちた。
創始も私と一緒だったんだ。
元の世界に帰るために、長い時間を一人で試行錯誤して――その苦労や負担の大きさは計り知れない。
「今回はミラが前世を覚えていた。勝ったと思ったね。次に転生したら、ミラとソウシも、今のことを覚えてるかもしれないじゃん」
「すごい……元の世界で一緒に生きられるんだ」
たしかに、そうなれば創始の粘り勝ちだ。
諦めないでくれてよかった。
でも――あれ?
「うれしいけど、元の世界で生きるとなると、転生するために、もう一度だけ世界を滅亡させなきゃいけない?」
「それはそう」
「嫌だよー大量虐殺じゃん」
「どのみち扉が開けばミラは吸い込まれて、無意識に世界を滅亡させるよ」
「意識があるとかないとか関係ないよ」
なんの罪もない人たちを攻撃する。
それはすごく怖い。
「やりたくない……」
「どうにか避けたかったけど無理なんだ。それに多分、世界中の人がこの繰り返しに巻き込まれてると思うんだ。俺さ、ずっと自分だけが繰り返しているのか、俺以外も繰り返してるのかが分かんなかったんだよ。でも今回ミラが過去を思い出したってことは、他の人たちも同じように転生を繰り返していて、ループから抜け出せてないんじゃないかな」
「私たち二人だけが繰り返してる可能性は?」
「どうかな。そんなに細かいこと設定してない気がする」
「設定?」
「この扉を作ったのも、魔獣を強化して元の世界に送り込んだのも、要するに全ての元凶はクリムなんだよ。俺が転生する前の」
「え! クリムさん悪者なの?」
あんなに穏やかで優しかったのに!……ってそれは創始が転生していたからってこと?
「世界征服のついでに異世界征服もしたかったらしい。いろいろ実験した記録が残ってたけど……わりと大雑把なんだよな。だから繰り返し転生させるにしても自分一人か、世界中全員かのどっちかだろうと予想してた」
「ええ……クリムさんのイメージ壊れるなあ。イケボで優しくていい人だなって思ってたのに」
「残念。ってか……結構気に入ってたんですね。こっちのキャラ」
「うわぁなんか使い分けてる!」
「そりゃ仕事と普段でキャラ分けくらいするよ」
「はーなんか大人。本当に、創始は長い時間を生きてきたんだね」
「キャラ変を感心されてもな。で? 滅亡させる覚悟は決まった?」
「えー……みんな仲良く転生して復活するなら?……いやでも抵抗はある。結構ある」
「ま、簡単に割り切れないよな。気休めになるか分からないけど、これ持っていきなよ」
手のひらに握らされたのは、小瓶だった。
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