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ディアンが動かなくなったのを見て、メアリーは不安になり、
「あの、すみません……突然、尋ねたりして……」
座っていた椅子から立ち上がって、自信なさげに言葉を紡ぐ。
「……あ、いや、それは全く問題ない」
動き出したディアンは、素早く扉を閉め、メアリーまで数歩の距離を縮めて、
「どうしたんだ? 何かあったのか? ……化け物の気配はしないが……」
言いながら、メアリーを心配そうに見つめる。
「いえ、あの……ごく個人的な理由で、来ました」
メアリーは、俯きそうになるのを、ぐっと堪えて、
「あの、」
ディアンの、若葉色の瞳をまっすぐに見つめて、
「……私、ディアンさんが、好きです」
勇気を振り絞って言った。
ら、
「…………」
ディアンがまた、固まった。
「……ディアンさん? その、……やっぱり、ご迷惑、でしたか……?」
泣きそうになってしまって、それを見られたくなくて、俯いてしまう。
「──え? や、ち、違う。メアリー、違う。迷惑とかじゃない。その、……夢かと思ってしまったんだ。自分に都合の良い夢かと」
「夢じゃないです……」
「そうだよな、すまない。メアリー、顔を上げてくれないか。君の顔が見たい」
その言葉と、困ったような声に、メアリーはそろりと顔を上げる。
「……メアリー……」
泣きそうになっている赤い顔を見て、ディアンは途方に暮れたような声を出してしまう。
「メアリー、抱きしめて良いだろうか。君が愛おしく見えて堪らない」
それを聞いたメアリーの顔が更に赤くなり、ディアンはもう、耐えきれなくて、メアリーが何か言う前に、
「メアリー。愛してる」
メアリーを抱きしめた。
「わ、私も好き……あの、愛してます……」
メアリーがおずおずと、ディアンを抱きしめ返す。
「ありがとう、メアリー。……恋人になってくれないか」
「よ、よろしくお願いします……」
「こちらこそ、メアリー。とても嬉しいよ。夢みたいだ」
「夢じゃないです……」
「ああ、そうだな」
ディアンはメアリーを、その愛おしい存在を確かめるように抱きしめ直すと、
「……メアリー」
少しだけ、体を離して、メアリーの顔を見て。
「キスをしても、いいか?」
その頬に触れ、顔を近寄せ、
「この前は、できなかったから。ずっと後悔してたんだ。チャンスを逃したって」
苦笑しながら言われて、それを聞いたメアリーは、目を見開いてしまった。
「なあ、メアリー」
その時と同じ──それより、熱のこもった眼差しを向けられて。
「……はぃ……」
熟れたリンゴのように赤くなったメアリーは、か細く返事をする。
「ありがとう、メアリー。愛してる」
もう一生、離さない。
ディアンはそう思いながら、メアリーの唇に、自分のそれを重ねた。
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