3  戸惑う彼女と、自信に満ち溢れた彼

3/3
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
 ディアンがなぜ、これほどまで、自信を持っているのか。  それは、惚れ薬の効果もあるだろうが、メアリーからの事前説明も、大いに関係している。 『惚れ薬の、最大の注意点を言いますね。自分に惚れている人間に惚れ薬を飲ませる……まあ、ウォーカーさんの場合、失恋した相手を見ながら飲む、という状態になると思いますが。その状況下では、惚れ薬の効果は薄くなるんです。相乗効果で気持ちが増幅はしても、最高到達点には届きません。その三分の一くらいなんです。ですから、飲む時には、相手を選んで飲んで下さいね』  どうして最大の効果が得られないのかと聞けば。 『そもそもですね、惚れ薬というのは〝惚れさせるための薬〟なんです。ですから、惚れていない相手に飲ませる、が、通常の条件になるんですよ。だからこそ、自分に惚れている人間には、効果が薄い。そういう、ある意味とても危険な薬なので、簡単には依頼を受けませんし、受けるとしても詳しく話を聞いて、妥当と判断できなければ、売ることは出来ません。値段設定が馬鹿高いのも、まあ、材料も関係していますが、概ね同じ理由です』  聞きかじった知識しか無かったので少し不安だったディアンは、それを聞いて、内心、大いに喜んだ。  つまり、メアリーに惚れているのだから、言動全てを惚れ薬に操作されることなく、メアリーを口説けるという訳だ。  自分の言葉は、惚れ薬から来るものだけではなく、自分自身の心からの言葉であり、行動もまたそうであるのだ。  なら、存分に、心の内をメアリーに見せよう。想いを告げよう。  この想いは、嘘の想いではないのだから。  だからディアンは、これほどまでに堂々としている。  それに、薬の効果が切れても、本当のことを話せば──驚かれるだろうが──メアリーはきっと、僅かでも、自分の想いを受け止めてくれる。  そこからが正念場だが、とも思いながら、ディアンは朝の鍛錬をこなした。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!