5 デート当日

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 無事に届いた荷物にホッとしながら、いや、中身を確認するまでは気が抜けないと、メアリーは気を引き締める。 「この包みを、開ければ良いのか?」  荷物を受け取る際に、自分が持つとディアンに言われ、そう危険なものでもないし、と了承したら、作業場まで持ってもらうことになってしまった。 「はい。中身、危険では無いですけど、見た目が少しアレなので、覚悟して下さいね」  それを見て、少しは引いてくれないかと思いながら、メアリーは言う。 「分かった」  作業テーブルに包みを置いたディアンは、丁寧にそれを開け、中の物を目にして、 「これは……マーマンの幼体の干物か? だとしたらとても高価なものだな」 「……よく分かりましたね……」  引かれなかったことに、残念なような、安心したような、よく分からない気持ちで、メアリーは、それを肯定する。  メアリーが魔法使い協会を経由して注文したのは、ディアンが言った通りに、『マーマンの幼体の干物』だ。  マーマンの成体は、全身を硬い鱗で覆った姿をしているが、幼体はまだ、その鱗が柔らかい。そして、身を守るための鱗がまだ完全ではないので、代わりに、体内で肉体再生のための特殊な体液を生成し、体全体に染み込ませるように蓄積させる。  魔法使いは、その『肉体再生のための体液』を薬の材料として使うのだ。 「マーマン、見たことあるんですか?」  発注した数や、それらに破損がないかや、体液の質などを確かめながらの、メアリーの問いかけに、 「成体も幼体も、見たことがあるし、捕まえたこともある」  ディアンはそう答えて、 「専門家が捕まえる、のも知っているが。聖騎士としての修行の一環でな。その専門家に教わって、一週間、研修のようなことをした」 「……聖騎士って、水の中でも戦うんですか?」  マーマンの生息域は、水中──海中の、しかも五百メートル以上潜った場所とされている。記録によれば、最深は、千二百メートルだ。 「記録には、水中戦の記録もある。……メアリーは、冥界の化け物の存在は、知っているか?」 「知ってますよ。魔法使いの基礎知識ですからね。聖騎士が誕生するまでは、魔法使いと聖職者で討伐していたと、教わります」  全ての検分を終えて、干物を棚へ仕舞おうとしたメアリーに、 「俺が仕舞おう。踏み台を見たということは高い位置ってことだよな。場所を教えてもらって良いか?」  目端が利くな、と、メアリーは思いながら、 「では、お願いします。その、焦げ茶の棚の、上から三番目、右から五番目の引き出しです」
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