8 もう一生、離さない

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 ディアンが動かなくなったのを見て、メアリーは不安になり、 「あの、すみません……突然、尋ねたりして……」  座っていた椅子から立ち上がって、自信なさげに言葉を紡ぐ。 「……あ、いや、それは全く問題ない」  動き出したディアンは、素早く扉を閉め、メアリーまで数歩の距離を縮めて、 「どうしたんだ? 何かあったのか? ……化け物の気配はしないが……」  言いながら、メアリーを心配そうに見つめる。 「いえ、あの……ごく個人的な理由で、来ました」  メアリーは、俯きそうになるのを、ぐっと堪えて、 「あの、」  ディアンの、若葉色の瞳をまっすぐに見つめて、 「……私、ディアンさんが、好きです」  勇気を振り絞って言った。  ら、 「…………」  ディアンがまた、固まった。 「……ディアンさん? その、……やっぱり、ご迷惑、でしたか……?」  泣きそうになってしまって、それを見られたくなくて、俯いてしまう。 「──え? や、ち、違う。メアリー、違う。迷惑とかじゃない。その、……夢かと思ってしまったんだ。自分に都合の良い夢かと」 「夢じゃないです……」 「そうだよな、すまない。メアリー、顔を上げてくれないか。君の顔が見たい」  その言葉と、困ったような声に、メアリーはそろりと顔を上げる。 「……メアリー……」  泣きそうになっている赤い顔を見て、ディアンは途方に暮れたような声を出してしまう。 「メアリー、抱きしめて良いだろうか。君が愛おしく見えて堪らない」  それを聞いたメアリーの顔が更に赤くなり、ディアンはもう、耐えきれなくて、メアリーが何か言う前に、 「メアリー。愛してる」  メアリーを抱きしめた。 「わ、私も好き……あの、愛してます……」  メアリーがおずおずと、ディアンを抱きしめ返す。 「ありがとう、メアリー。……恋人になってくれないか」 「よ、よろしくお願いします……」 「こちらこそ、メアリー。とても嬉しいよ。夢みたいだ」 「夢じゃないです……」 「ああ、そうだな」  ディアンはメアリーを、その愛おしい存在を確かめるように抱きしめ直すと、 「……メアリー」  少しだけ、体を離して、メアリーの顔を見て。 「キスをしても、いいか?」  その頬に触れ、顔を近寄せ、 「この前は、できなかったから。ずっと後悔してたんだ。チャンスを逃したって」  苦笑しながら言われて、それを聞いたメアリーは、目を見開いてしまった。 「なあ、メアリー」  その時と同じ──それより、熱のこもった眼差しを向けられて。 「……はぃ……」  熟れたリンゴのように赤くなったメアリーは、か細く返事をする。 「ありがとう、メアリー。愛してる」  もう一生、離さない。  ディアンはそう思いながら、メアリーの唇に、自分のそれを重ねた。
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