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20××年。
つい十年ほど前まで、ひづりの住む国では長らく孤独死が死因のナンバーワンを占めていた。
というのも、配偶者を持つ人ばかりが罹患する原因不明の致死率の高いウイルスが蔓延していたからだ。
初期の頃は高齢男性の罹患と死亡率が高く、その原因がウイルスではなく、加齢によるインフルエンザの変異などという理由で、とくに究明されることなく放置されてきた。
しかしそれからほどなくして、若い既婚男性や女性にも拡がりを見せるようになり、対処方法も原因も分からないため、あっという間にウイルスは若い世代にも拡がり、容赦なく多くの命を奪い去っていったのだ。
当然、日本の人口は急激に減少。そこでようやく異常事態だと認めた政府は、原因究明に乗り出し、取り返しのつかない多くの犠牲を払った末、ようやく長い時間をかけて既婚者だけが罹患するウイルスであることを調べ上げたのである。
いわゆる閨が原因の病かと思われていたこともあったが、どういうわけか、そういうわけでもないらしい。
治験によると、未婚のパートナーたちは罹患しないことが結果として判明している。
既婚者だけに罹患する謎のウイルス。
まだまだ全貌が明らかになるまでには時間がかかりそうだが、十年前より市場に特効薬として抗ウイルス剤が市場に出回るようになった。おかげでだいぶ生きた化石と呼ばれていた僅かな生き残りの既婚者たちの罹患率及び、致死率は目に見えて食い止められるようになった。
それから十年。
抗ウイルス剤が発明されても、当時のパンデミックを目の当たりにしていた世代は、当然「結婚」という選択肢を避ける人々がほとんどだった。
また昨今の給料が上がらない、でも税は取られるなど経済面の悩みも相俟ってか、全世代で単身者のみが増加し、人口減少に歯止めはかかったが、出生率が大幅に減少していたのもまた事実であった。
またしてもその事実に困窮したのは政府である。
五年前より国をあげて、国民が二十五歳を迎える年、とくべつな場合を除き、単身者はお見合いをさせられる制度ができた。
別軸でジェンダー問題などもあるせいか、強制ではないが、パートナーを作り、社会問題である孤独死を少しでも減らそうというねらいも、そこには含まれているらしい。
初恋の相手をずっと忘れられず、先月二十五歳の誕生日を迎えてしまったひづりは、政府はとんでもない制度を作ったなと顔を歪ませる日々――だったのだが。
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