Marriage!

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 ずっと、などと隠岐島は話していたが、仲人役のという方が離席するまでの時間だから、わずか五分とかそれくらいの時間のことだ。  大袈裟である。  けれど正直ひづりは、好きな相手に少しでも自身を認知されたような気がして、ぎゅっと握った拳が自然と綻んでいくのを感じた。 「隠岐島のこと……いやだなんて、思うヤツ、いないから」  だからか。ふたたび芽生えた恋心が、いまにも暴走しそうだ。  ひづりよりも少し上に目線のある隠岐島の、柔らかいハチミツのようなブラウンの瞳を見つめ、あまりにも整い過ぎた笑顔の破壊力にやられ、慌てて視線をあさってのほうへ逸らす。 「だったら嬉しいなあ、って……さっそく、田沼の視線が僕から外れてるんだけど? どういうことだよ」  ふんす、と分かりやすく怒った顔をして見せた隠岐島は、羞恥で視線を外してしまったひづりの顎を片手で軽々と掴むと、強引に自身のほうへ向けた。 「相変わらず、田沼の顔はちっさいねー。僕の掌くらいの大きさしかないんじゃない?」  上機嫌にひづりと視線を合わせる。 「まあ、視線が合わなければ、昔のように僕のほうから合わせればいいだけのことだし。好きじゃないなら、好きにさせればいいだけのことだし」  そう言うと、隠岐島はもう一度にっこりと微笑んで、ひづりの顎から手を放した。  ――え……?  隠岐島の言葉に、ひづりは耳を疑った。  ――いま、なんて隠岐島は言った? 好きじゃないなら……好きにさせれば、いいだけって、誰に対しての言葉……だ?  困惑したひづりは大きく瞬きを二回して、ハチミツブラウンの瞳に問うてみた。  けれど隠岐島はそれには応えず、あろうことか大胆な提案を申し出てきた。 「とりあえずこんなところにいても、ただ顔を見合うだけで終わりそうだから、僕たちこれからふたりで抜けない? たしか、お見合いが成立したらそのまま会場を抜けていいって、柏木さんも言ってたし」  ね? と、念押すように頷いた隠岐島は、そのまま対面に座るひづりの肩を叩き、離席を強引に促した。  隠岐島を好きなひづりは、もちろん拒否なんてできるわけはなく、素直にすっと硬いパイプ椅子から立ち上がる。 「よし。じゃあ、外へ出よう。僕とデートしよう」  いつの間にか両脇がパーテーションで仕切られていたテーブルのひづり側まで隠岐島はやって来て、目の前に男らしい節ばった右手を差し出す。 「今度は拒否らないでいてくれると、僕としては嬉しいんだけど……」  控えめな主張にひづりは頬が赤みを帯びる。それから自然と口許が綻んでいくのを感じ、返事の代わりに大きくひとつ頷いて、憧れだった大きなその手にそっと自身の手を預けた。  隠岐島の手の温度が高いような気がする。その事実がまた、ひづりの心臓を爆発しそうなくらいドキドキさせる。  ――あ、ヤバイ。本当に好きだ。隠岐島が、好きだ。大好きだ。  
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