悪役令嬢をまっとうしたら第二王子に攫われました。〜新天地で溺愛されながら好みのドレスで新婚生活を満喫します〜

20/28

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
 牢の付近や出入口には、見張りはいないようだった。おそらく鍵を新しく頑丈なものに変えたため、見張りを撤退させたのだろう。  無事地下牢の入口を抜けて、ホッとする。 (……このままこっそり抜け出して、街まで出られれば)  そう思い、ハッとして考え込む。 (ラファエル王子の周辺を探れば、ソフィア様がいなくなった経緯や状況も分かるかな)  王宮に背を向けてから考え直す。振り返ると、そこには石造りの豪奢な城がそびえ建っていた。  その瞬間、王宮の入口門が音を立てて開き出した。ぎょっとして、オリヴィアは隠れる場所を探す。  石像の裏に隠れ、息を整える。 (……し、心臓が飛び出すかと)  城から出てきたのは、ラファエルだった。家臣となにやら話している。 「拷問でもなんでもして、ソフィアの居場所を聞き出せ」 「しかし……彼女はローレンシア公爵家の」 「オリヴィアはローレンシア家からとっくに勘当されてる。問題ない」 「はっ」  ラファエルはそのままオリヴィアの脇を通り過ぎていく。気配が近付き、オリヴィアは身を固くした。 「私は街にもう一度ソフィアを探しに――」  ラファエルが振り返る。そして、足を止めた。 「――待て」  ラファエルの声が低くなる。 「どうなさいました?」 「地下牢の扉が開いているが」 「え?」  ラファエルの声が一層不機嫌になる。 (……まずい。バレた)  どうしよう、と狼狽する。  ラファエルは地下牢の入口へ歩き出した。オリヴィアの所在を確かめに行くつもりなのだろう。 (このままここにいたらすぐに見つかっちゃう……)  逃げなければ。  ラファエルが背中を向けている今のうちに。  幸い、家臣たちもラファエルの後に続いていこうとしている。  そっと歩き出した瞬間、あろうことか一歩目で小枝を踏んだ。  パキッと高らかな音が空に抜けるように響く。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加