悪役令嬢をまっとうしたら第二王子に攫われました。〜新天地で溺愛されながら好みのドレスで新婚生活を満喫します〜

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 それから一年後、オリヴィアとレイルは王宮にいた。  王宮の大ホールにはたくさんの人が集まっている。  オリヴィアはレイルと共に、王族席に座った。  今日は現国王の退位式と、ラファエルの即位式、且つラファエルとソフィアの結婚発表の祭典なのである。 「ソフィア様、綺麗だね」 「うん。兄様も」  ソフィアは純白のフレンチノットステッチ刺繍が施されたドレスを身にまとっている。  胸元はがらりと開いているが、バルーン型の袖口とレース刺繍の装飾が可愛らしく、清楚なイメージを与えるため、決して下品な印象にはならない。  清廉なソフィアと、この祭典にぴったりのドレスだった。  そして、オリヴィアの方はと言えば、薄紅色のクラシカルワンピースを身にまとっていた。  幾何学文様の生地の上から重ねられた幾重ものレース刺繍は、エレガントな気品が漂う。  ソフィアのドレスより目立たないよう、且つ王族として気品のあるドレスを、と思って選んだ一着だ。  どちらのドレスも、オリヴィアがデザインしてレイルが作ったものである。  渾身の出来だ。やっぱりソフィアはなにを着ても似合う。  オリヴィアは弾む心で祭典を見守った。  祭典が終わると、ソフィアがオリヴィアに駆け寄った。 「オリヴィア!」 「ソフィア妃。このたびはおめでとうございます」  勢いよく抱きついてくるソフィアを受け止め、オリヴィアは笑みを浮かべる。  オリヴィアを専属のスタイリストブランドにしてからというもの、ソフィアは随分オリヴィアに懐いた。嬉しい限りである。  オリヴィアが頭を下げると、ソフィアはにっこりと笑った。 「ありがとう、オリヴィア。このドレス……すごく、すごく可愛いわ。私、最初はすごく怖かったの。このまま彼と王国を背負って立つんだって思ったら……こんな、私みたいななにもない人間に、務まるのかって」  ソフィアは目尻に涙をためて微笑んでいる。 「……でも、このドレスのおかげで自信が持てたわ。これからきっと、辛いことも苦しいこともたくさんあるのだろうけれど……ふたりで乗り越えていく」  オリヴィアとレイルは顔を見合わせて、ふっと微笑み合った。  そして、ソフィアの手を取る。 「……私たちもいますよ、ソフィア妃」  続いて、レイルが言う。 「えぇ。王宮には住んでいないけれど、なにかあれば必ず駆けつけますから。いつでも頼ってください」 「……ありがとう。オリヴィア、レイル」  今日、新しい国王と妃が誕生した。  空はふたりの門出を祝福するように晴れ渡っている。  すべての行事が終わると、レイルとオリヴィアは帰り支度を済ませて王宮を出た。  王族たちが総出で見送りに出てきてくれる。一年前ではとても信じられなかった光景だ。  何千人の王宮従者がそろった王宮の庭は、圧巻である。オリヴィアは感慨深くその景色を眺めた。  レイルはオリヴィアを抱き上げ、空に舞い上がる。 「じゃあね。兄様、姉様」 「国王、だぞ。レイル」 「そうだった。ラファエル国王」 「達者でな」 「またすぐ来るよ」  レイルとラファエルは笑顔で挨拶を交わす。オリヴィアとソフィアも向き合った。 「オリヴィア、またあとで新しいドレスのデザインをお願いするわ」 「はい。待ってます!」  一年前、オリヴィアとレイルが立ち上げた王宮ブランド『utopia dressroom(ユートピア ドレスルーム)』は、今や王国の女性に大人気の女性ブランドになっていた。  オリヴィアはあれから、正式にローレンシア公爵家から勘当を撤回された。  家路を辿る道の中、オリヴィアがそっとレイルを見上げた。 「レイルくん」 「なに? オリヴィアさん」 「ソフィア妃、綺麗だったね」 「? ……そうだね?」  レイルはきょとんとした顔で、オリヴィアを見下ろした。 「花嫁……って、なんかいいね」 「!!」  頬を染めて言うオリヴィアに、レイルは破顔した。 「は……花嫁? 花嫁〜!?」 「う……な、なによ。花嫁に憧れちゃ悪い?」 「オリヴィアさんは出会ったときからずっと僕の花嫁だよ〜!! 僕もう今すぐオリヴィアさんと結婚する〜!!」 「い、いいよ、そういうこと言うの……」  レイルはオリヴィアの頬にきゅっと顔を擦りつけた。 「わっ! もうレイルくん、ちゃんと前見てって」 「オリヴィアさん、好き〜!」  レイルが叫ぶと、オリヴィアもふっと頬を緩ませた。 「……わ、私も」  レイルはオリヴィアを強く抱き締め、ふたりが住む洋館に急ぐ。  洋館の前に一ひとつの影があった。オリヴィアが指を指す。 「あっ、見てレイルくん。洋館の前に誰かいるよ」 「本当だ、誰だろう」  レイルは急下降する。大地に降り立つと、ふたりは服の皺を伸ばしてその影に声をかけた。 「こんにちは。うちになにか御用でしょうか?」  洋館の前にいたのは、メイド服を着た使用人風の女性だった。ふたりに気付き、振り向く。 「……あの、こちらって、あの有名なutopia dressroom様のお宅かしら?」  レイルが頷く。 「いかにも。あなたは?」 「わたくし、アレクサンドル公爵家の召使い、メラといいます。お嬢様にパーティー用のドレスを仕立てていただきたいのですけれど、頼めるかしら」  パッと、オリヴィアの顔に花が咲く。レイルはそれを見て優しげに笑った。 「もちろんです! 承ります!」
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