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「ありがとう綾瀬。いろいろ計画してくれて」
「そりゃまあ彼女ですから」
座った姿勢のままふんぞり返る綾瀬を見て僕は笑った。
おちゃらけてはいるが、モノクロの視界でも楽しめるプランを彼女が練ってくれたのは事実だ。おかげでとても楽しめた。感謝してもしきれない。
同時に、いまだに少しこの状況が信じられない気持ちもある。私服姿の彼女と並んでアイスをかじることになるなんて想像もしていなかった。
だからこそ僕は色を見失ってしまったのかもしれないけれど。
「なんてね」
綾瀬はコーンの先っぽを口に放り込んだ。カリカリと軽い音を立てながら咀嚼し飲み込む。
そして目の前の空を眺めながら口を開いた。
「ほんとはただの罪滅ぼし」
「罪?」
「だって私のせいでしょ、その目」
「ちがうよ。僕がびっくりしすぎただけ」
「でも私が告白しなかったらそうはならなかった」
結果論だ。いったい誰が自分の告白で相手の色を奪うなんて想像できるだろうか。
僕は決して今の状態が彼女のせいだとは思っちゃいない。
けれど、彼女はそうじゃなかったのか。
「憶えてる? 私たちが美術部に入ったときのこと」
綾瀬の言葉を引き金に、僕の頭に誰もいない放課後の美術室が浮かび上がった。
その記憶はまだ僕の中でくっきりと色付いている。
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