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謙一(けんいち)は仕事に向かっていた。謙一が勤めている会社は工場で、力仕事が多い。謙一は作業着で仕事に向かっていた。就職してもう3年目。すっかり職場に慣れてきて、先輩からの信頼を得てきた。そろそろ恋に恵まれないかなと思っている。だが、この会社には女が少ない。経理ぐらいだ。
「今日も行かなくっちゃ」
謙一は駅までの道のりを歩いていた。高校を卒業して、東京にやって来て7年。すっかりここでの生活に慣れてきた。大学時代は勉強で大変だったが、多くの友達に囲まれていい日々を送ってきた。
「はぁ・・・」
駅までの道のりはそんなに歩いている人は多くない。だが、工場の最寄り駅は多くの人が歩いている。
謙一は汗を流していた。すでに気温は30度近い。謙一は麦茶の入った水筒を持っている。工場内は冷房がないので、夏はとても暑い。夏場は水筒が外せない。つらくても、それが仕事なんだと思って頑張っていた。
「おっと・・・」
と、謙一は何かを蹴飛ばしたのに気が付いて、下を向いた。そこには花瓶があり、花が入っている。花瓶は割れなかった。それを見て、謙一はほっとした。
「元に戻さないと・・・」
謙一は元々あったと思われる電柱の横に戻した。せっかく誰かが置いたのに、壊してはならない。
「さて、行くか」
謙一はいつも通りに最寄り駅に向かった。その先には交差点がある。右を見て、左を見て渡った。駅まではあと少しだ。乗り遅れないように気を付けよう。
だが、謙一は気づいていなかった。自分の後ろに、黒い影がいるのを。というより、誰もその黒い影に気が付いていない。
正午過ぎ、謙一は昼食を食べ終え、テレビを見ていた。だが、退屈だ。新しく入った子が別のを見ていて、それが自分的には面白くない。
「ちょっと寝よう・・・」
つまらないので、謙一は仕事の10分ぐらい前まで寝る事にした。
謙一が目を覚ますと、そこは自宅のあるマンションから駅までの道のりだ。そしてそこは、花瓶のあった辺りだ。どうしてここにいるんだろう。全くわからない。謙一は戸惑っていた。
「えっ!?」
だが、いつも通りの朝だ。駅に向かおう。工場に向かわないと。
「さて、行くか」
だが、交差点を渡ろうとしたその時、誰かに押された気がした。
「うわっ・・・」
押されて進んでしまったちょうどその時、大きなトラックが突っ込んできた。謙一は目をふさいだ。はねられたと思った。
だが、謙一は目を覚ました。どうやら夢だったようだ。
「ゆ、夢か・・・」
突然、誰かが謙一の肩を叩いた。謙一は上を向いた。上司の上田だ。
「どうした?」
「いや、何でもない」
だが、謙一は夢の事を言おうとしない。あまり気にしていないようだ。夢は夢、現実は現実。悪夢なんて、あまり気にせずに頑張ろう。
「そっか・・・」
謙一は時計を見た。そろそろ仕事の時間だ。準備をしないと。
夕方6時ごろ、謙一は今日の仕事を終えて、自宅に向かっていた。自宅の周辺は閑静な住宅地だ。
「うーん・・・」
だが、謙一は気になっている事があった。あの夢だ。あの夢は一体、何だったんだろう。正夢のようで、まるで生きた心地がしなかった。それに、どうしてあの花瓶があった場所なんだろう。
「あと少しだな」
と、謙一は背後に誰かがいる気配がした。だが、そこには誰もいない。誰かがいたようなな気がしたんだけどな。謙一は首を傾げた。
「あれっ・・・。誰もいないよな・・・」
やはりあの夢が気になる。ひょっとして、あの花瓶を蹴ったために悪い夢を見てしまったのかな?
「あの夢、何だったんだろう」
謙一が交差点に差し掛かろうとしたその時、黒い影が大きくなり、後ろに黒い少年が現れた。黒い少年は暗い表情で、何かを狙っているようだ。突然、黒い少年は謙一を押した。
「うわっ!」
謙一は声を上げた。その直後、大きなトラックが突っ込んできた。あの夢の時と一緒だ。これは現実だ。あの夢と同じことが起きるなんて。まさか、あの花瓶を蹴ったために呪われた? 後悔してももう遅い。謙一は即死だった。
「フフフ・・・」
その後ろで、少年が不気味な笑みを浮かべている。
近所の話では、この交差点でかつて、少年がトラックにはねられる交通事故があったという。あの花瓶は、それで亡くなった男の子を供養するためのものだという。
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