2

1/3

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

2

事の始まりはアラン・ロシュフォール伯爵様からの手紙を受け取った時に遡る。 「大変だ! 今から家族会議を開く! 全員応接室に集まるように!」 使用人のいないルブラン男爵邸に、父であるリチャード・ルブラン男爵の声が響く。 「フィオ姉様、起きてる?お父様が呼んでいるわ」 隣室の扉をノックして、中にいるはずのフィオ姉様に呼びかける 「おはよう、クリスティナ。早いのね。お父様が? 今度は何をやらかしたのかしら?」 「これ以上のトラブルは勘弁してほしいですね」 そう、この邸になぜ使用人がいないのかというと、ズバリ貧乏だから。 私達家族は皆おそらく楽観主義者だ。 物事を深く考えない。そうなった原因はお父様ではないかと思っている。  お父様はよく言えば人が良い━━のかな? 母が生きていた頃は商会を経営していた。 母は計算が得意だった。 父は人当たりがいい。 二人で協力して商会はそれなりに潤っていた。 母が亡くなってから、徐々に貧乏になっていった。 父は計算が苦手だ。 細かい数字があっていなくても気にしない。   そんなどんぶり勘定では経営などできるはずもない。 細かい数字があっていなくても気づかない父に目をつけ、従業員が横領していたことが発覚。 その従業員をクビにしたら、別の従業員が商会のお金を持ち逃げ。 その他トラブルが重なって立ち行かなくなり、結局商会は手放すはめに…… 今後の見通しもたっていないのに、知人に頼まれたからと連帯保証人をひきうける。 案の定、知人が逃亡して借金を背負いこむはめに。 またある時には、どうみても何の効果もなさそうな怪しげな壺を、訪問販売の人の泣き落としにあい高額で購入。 使用人への給金が払えなくなったので、徐々に人が減っていった。 最後まで残ってくれていた執事のセバスチャンも、高齢のためつい先日退職したばかり。 なので、私達は名ばかりの貧乏貴族だ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加