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「なんでしょう? フィオ姉さま」
「お相手はロシュフォール伯爵様だそうよ」
「ロシュフォール伯爵様といえば、社交界に行かない私達の耳にも届く程の大貴族ではないですか! すごいですフィオ姉様! いったいどこでお知り合いに?」
「会ったことないわ。だから、クリスティナ、よく聞いて。
結婚式の1ヶ月前には邸に引越してほしいそうよ」
「式の前にですか? ふふふ、フィオ姉様と早く一緒に住みたいのでしょうね」
「だから、クリスティナ、いいこと、1ヶ月私に成りすましてちょうだい。」
「は⁉︎ フィオ姉様、なんの冗談ですか?」
「絶対にバレないから大丈夫! じゃ、そういうことでお願いね? あ、髪色は染めてね」
「いえいえいえ、フィオ姉様、ちょっと、どういうことですかーーー?」
フィオ姉様の走り去る姿が父と重なって見えて、やはり親子だなとほっこりした気持ちになる。
って、そうではなくて、お二人共ちょっと身勝手すぎます。
仕方なくフィオ姉様の残していった手紙を拝見する。
1ヶ月前ってこれ今日ではないですか⁉︎
お父様、言い出せなくて黙っていたのですね⁉︎
いやいやいや、もはや自分で染めるしかないですね。
染料が思いの外高かったので、1ヶ月だけ色が持てばいいかなと安い染料で金色に染め上げた。
そして、到着早々ロシュフォール伯爵様からは意味不明の宣言をされた。
結婚するのだからと、心の中で旦那様と呼んだのがいけなかったのでしょうか………
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