閉じ込めた光の姿は

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物事の終わりは最初は静かに、やがて堂々とやって来る。 毎日毎日呆れる程溢れていた観光バスの団体客は、どかんとピークを迎えた後は急激に減り続け、ほんの数年で一日十台程度も来ない日も珍しくなくなった。 全国的に旅行客、特に団体客は最盛期の半分以下まで落ち込み、現在はほとんど無くなりそれが普通になっている。 更に、僕らが恐れていたもの。 天敵とも言える「カラーコピー」が一気に普及を始めた。 集合写真を撮っても「一枚だけちょうだい」と言われる様になった。 後でみんなにカラーコピーして配るからと、わざわざ僕らの目の前で得意気に言うお客さんも多かった。覚えた事は使いたくなるものだ。 もちろんそうなる事は会社側も予測していて、団体客より個人客をメインにシフトして行くが、そもそもお客さん自体がいなくてはどうしようもない。 そもそも観光写真は個人でやるもので、規模を大きくしてはいけなかったのではないかと思う。 特別な観光地や伝統ある旅館だけでこじんまりとやるべきだったのではないか。 セールスをしなくても仕事が成り立っていたという、先代の頃で既に完成形だったのだろう。 業務の縮小とリストラをせざるを得なくなり、僕は別の支店に副店長として移動になる。 そんな状態で大切な人を連れては行けなかった。何より相手の両親が許さなかった。 現在もその会社は存在する。 でも僕が青春時代を捧げた支店が撤退したのは、携帯電話にカメラが搭載されるより早かった。
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