閉じ込めた光の姿は

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さて。デジタルカメラに対して、昔のカメラを銀塩(ぎんえん)カメラ、フィルムカメラ等と言う。アナログカメラとは言わない。それは防犯用カメラの一種になるのである。 撮影するには別売りのフィルムが必要だ。半透明のプラスチックのケースに入っているのだが、これが丈夫でサイズも手頃で、パチッとフタを閉めれば捨てるのも勿体なくて、いろいろ再利用したものだ。 だがフィルム本体は再利用出来ない。可哀想だけど敢えて今風に言うなら容量が少ないのに高いぼったくりのメモリーだ。 最大36枚しか撮れないのに一本千円以上したから、子供にはカメラを持たせられなかった。 だってすぐにシャッターを無駄打ちするし、間違ってカメラを開けてフィルムに光が当たってしまえば、せっかく撮影した写真は消えてしまうのだから。 フィルムに光は厳禁。 これ、デジカメしか知らない世代にはピンと来ないらしい。 昔は写真と言えば暗室が付き物だった。薬品の匂いが充満した部屋で分厚く黒い遮光カーテンを引いて、暗闇の中で作業するのが常識だったのに。 そして撮影済のフィルムは、その暗室や薬品の設備がある写真屋さんに持って行く。 自宅で写真をプリント出来るなんて、余程のマニアだけだった。 写真が仕上がるまでには早くても三日くらい。どうかすると一週間くらいかかったもんだよ。 今なら遅すぎると叩かれるだろう。その後三十分仕上げの店が流行ったけど、それでも写真売るってレベルじゃねーぞとか言われる事だろう。 更にその写真をみんなでゆっくり眺めた後で、また改めて焼き増しを依頼するんだから。若者達はもう呆れて倒れてしまうんじゃない? でも、そうやって仕上がりを待つのも楽しかったんだよな。 キレイに撮れてるといいな、ってさ。
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