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6.ピロートーク
顔を洗ってきてタオルで拭き終えた旭は佐々木に向けて話す。
「誰がこんなこと、予測できる?ノンケだと思ってた同僚が実はバイで、寝込みを襲ってきて二回、イかされて、挙げ句の果てに顔射されるなんて」
佐々木は布団の上に正座をして平謝りしてきた。
「本当に、ごめん」
佐々木の言い分はこうだ。麻雀をしているうちに眠くなり、旭のいる部屋に移動し爆睡。途中目が覚めた時に、何故かそういう気分になってしまい、隣で寝ていた旭のはだけた浴衣から見えた体に欲情してしまった。寝ているなら大丈夫かなと思って手を出したという。
「俺さ、今まで飲んだからってヤリたくなるようなことないんだけどなあ」
「何時頃、目が覚めたの?」
「三時くらい。水飲んだ時時計見たから」
旭が佐々木に触れてスッキリした頃が二時半過ぎだったので、その後佐々木が目覚めたということになる。ひょっとしたら佐々木がムラっときたのも、元はと言えば自分がちょっかいを出したからなのかもしれない、と旭は思いながら俯き、呟く。
「それにしても、同僚の男を襲うなんて……」
憧れていた佐々木とセックスをしたことは嬉しいのだが、結局は風俗と同じで、誰でも良かったんだろうなと思うと、旭は少しだけいたたまれなくなった。彼がバイであるというのは知らなかったので、男にも欲情できるという謎はとけたのだが。
「お前、発散できたら誰でもいいのかよ」
「誰でもなわけないだろ。このタイミングでいうのもアレだけど」
俯いた旭の顔を覗き込む佐々木。距離が近くて旭は思わず顔を背けた。
「何だよ」
「俺さあ、旭、結構好みなんだよね」
「……は?」
「顔が好みだけじゃなくて。お前さあ、色々一生懸命じゃん? 今回の社員旅行の件だってさ、俺らにわざわざ場所がここになってごめんって言ってくれたりさ。そんなの気にしなくていいのに」
ニカっと笑顔を見せる佐々木に、拍子抜けする。旭はじわじわと頰の熱が上がっていくのが分かってきた。
「俺、そういう奴に弱いんだよなー。なあ、旭。付き合わない?」
(か、軽いっ)
羽毛布団くらい軽い言葉に旭は唖然としてしまう。旭がゲイなのを佐々木は知らないはずだ。それなのに同性にあっけらかんと付き合う? なんて聞くとは。
「旭?」
何だか悔しくなった旭はこうなったら全部打ちあけてしまえ、と口を開いた。
「お前がムラムラしたの、僕のせい」
「……え、どういうことだ?」
旭が佐々木にしたことを伝えると今度は彼がポカンと口を開け、しばらくすると大笑いした。
「お互いに寝込みを襲うなんて、気が合う証拠じゃん」
佐々木の手が伸びてきて、旭のほおをさする。その甘い仕草に思わず顔を赤らめてしまう。
「なあ付き合おうよ」
答えを分かってて再度聞いてくる佐々木。
「……島崎が戻ってこなくて良かった」
照れ隠しに旭はつぶやいた。
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