時間

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近づいてくる足音の方を振り返ると血相を変えてこちらに向かって走ってくる奥田くんの姿が見えた。 「どうしたんだよ高山くん!探したじゃないか!?」 そうヒステリックに叫びながら奥田くんは僕の肩を掴んだ。 僕は一瞬血の気が引いた後で全身から汗が噴き出るの感じた。 あの日の出来事を身体中が思い出したかのように、手足が震えて上から下までの汗腺中から液体が流れ出てくる。 「え…高山くん?大丈夫かい?」 「近づかないでくれ!向こうに行ってくれ!!」 そう言って奥田くんの肩を突き飛ばそうと手を触れたがもう手遅れだった。 あの日と同じように僕の汗は粘り気を帯びその粘液は唐突に奥田くんの身体を取り込んでしまった。 やってしまった。 恐れていたことを。 「わ、わあ⁈な、なんだこれ⁇」 あっという間に汗は僕と奥田くんに絡みつき身動きが取れなくなってしまった。 「な、どういう事これ⁇ネバネバする!」 「え、ええと。だから僕はネバ山なんだよ…」 「どういうこと⁈」 あぁなんと説明すればいいのやら。 とりあえず僕は兎にも角にも奥田くんに黙ってほしかった。 「あの奥田くん…一旦落ち着いてほしい。あと、この状態はしばらくどうしようもないと思う…」 「えっえっ⁈こまるよ。そんなの。早く寝ないといけないのに。だってもうすぐ…」 そう言いかけて口を閉じた奥田くんは心配そうな顔をしている。 僕に構わず勝手に寝ていればよかったじゃないか。 なんでわざわざ探しにきたんだよ。 君がそうしなければこんな事には… 奥田くんを責める言葉がどんどん溢れ出てきたが僕は口には出さなかった。 何よりこの状況が気まずくて仕方がない。 ちらっと奥田くんを見ると彼の目は壁にかかった時計に釘付けだった。 怯えたように見開いた目が揺れた。 「あ、あ」 時計の針が10時を指した瞬間に廊下中の電気が一斉に消えた。 消灯時間だ。 「う、うわあああぁ…」 あたりを暗闇が襲った瞬間、夜の静寂を打ち破ったのは奥田くんの悲鳴のような叫び声だった。
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