月が落ちる

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 とある空間では…… 「いや、今回はこれまでで最高の結果になったね」  青いものが笑顔を浮かべる。 「そうですね。想像以上にうまくいきましたね」 「なにせ、今回は悪い人間だけを減らせたからね」  青いものの返答に黄色いものが笑顔を返す。 「しかし、思ったよりも大きなパニックになってしまい心配しましたよ」 「そりゃあ、君が悪意の強い人間を引力で屋外に引っ張り出したからだよ。悪い人が集まれば、そりゃあ大きな騒動になるだろうし」 「確かに悪意の強い人間が集まれば、争いが生じることは歴史が証明していますね。そんな中、悪意の少ない人間を引力で屋内に引き付けておいてくれたおかげで、悪意ある人間がいなくなって、優しい人間ばかりの世界になりましたね」  黄色いものはそんな世界を想像しているのか、キラキラと輝いて見える。  青い地球は自らを浄化するために、定期的に黄色い月と協力して浄化を行う。以前、月の引力を利用して洪水を起こしたり、火山の大噴火を起こしたりしていたが、悪人善人関わらず、人間を排除してしまう結果になっていた。そこで今回、地球が消滅するというパニック状態にして、月の引力で悪人だけを屋外に出し、地球の引力で悪意の少ない人は屋内に止まらせ、暴動に巻き込まれないようにしたのだ。 「残念ながら、人間社会は集団になると二六二の法則といって、どんなに調整しても二割の善人、六割の普通の人、二割の悪人が生じてしまうんだよ」 「では、今回やったことは無駄だったということですか?」 「いやいや、そんなことはないよ。今回、地球上(ぼくのうえ)から排除したので、しばらくは平和な世の中が続くよ」  そう言って地球は、月に笑いかけた。  了
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