就職した会社が悪の秘密結社だったんだけど、どうしたらいいですか?

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 私、田中みのり ―22歳独身― の人生のモットー(?) は、 『無難に生きる』。  子どものころから、ずっとこれ。勉強も運動も習い事も、そして容姿も。幼少期から、すべてが平均値。もしくは、それ以下。そんな自分が世の中を渡っていくには、無茶せず無難なところを狙うのが大事。と、考えてのことです。  絵とお話を描く人になる、なんて子どものころの夢物語は、中学ですっぱり捨てました。私レベルの人は山ほどいる。どうせプロになんてなれない。人生は諦めが大事。見込みがないと思ったら、すに見切りを付けないと。受験も、無理しない。絶対合格圏の学校だけ受けて。在学中に汎用性のありそうな資格を取って。適当な企業に就職して、適当に数年勤めて、結婚して子供を持って―。  そんなプランのもと、学生時代に、これなら何とかなりそうと判断した経理関係の資格を通信で取得しました。この資格を選んだのは、AI経理を導入している大企業は別として、大抵の組織には欠かせない仕事だと思ったから。業界だって、選り好みなんてしない。数撃ちゃ当たる、前進あるのみ!  …というわけで、それはもう片っ端からエントリーし続けてきました (とはいえ、給与や福利厚生、休暇など、これだけは、と思う就労条件クリアしたもの、というくらいには、絞り込みましたが)。  それなのに、ああそれなのに。         *** 「これも、これも。またダメかぁ…。」  カチ、カチ、と、旧式のPCマウスで1つずつクリックしメールを読み進めるも、並ぶのは『残念ながら貴女とはご縁が無かった―』『今後をお祈りしております』といった類の、お断りの言葉ばかり。  そんな連絡が100を超えると、さすがに堪えます。あまりにもお祈りされ過ぎて、もうほんと、神の領域か? て感じ。それとこれとは話が別と分かってはいても、自分自身を否定されているようで、辛い気持ちがボディブローのようにじわじわと沁み入ってきます。  カチ。  すっかり折れそうな心を奮い立たせて、最後のメールをクリック。 『時下益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。 弊社へのエントリー、ありがとうございます。貴殿のプロフィールに興味があり、できましたらご入社を前提に一度ご面談をさせていただきたく、ご連絡を差し上げます。 下記より、ご都合のよい日時をお知らせいただけましたら幸甚です。お忙しい中、遠くまでご足労いただくことになり誠に恐縮ではございますが、ご検討のほど何卒よろしくお願い申し上げます。 AHKカンパニー 人事部 紺野』  一瞬、頭がついていかなかった。え、え? ご入社前提の面談? て、つまり、これをクリアしたら内定ってこと?  AHKカンパニーなんて聞いたことないし、エントリーしただけでこれって、展開早すぎない? けど、もうこの際、何でもいいわ、とりあえず話を聞いてから考えましょ。  初めて巡ってきた最終面談、即ち、内定獲得のこの機会、逃すまじ!  独りアパートの部屋で拳を突き上げ、3日後の面談を希望する旨返信しました。
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