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「だ、ダメだよいきなり男にそんなスキンシップをしちゃ!それより……大丈夫?怪我してない?」
「えぇ、怪我はしておりません!お気遣いありがとうございます♪」
いつもニコニコしている彼女。無邪気な彼女の見た目が気になってしまった。
「落ちたのに凄いね……君は魔族の子?」
「えぇ、父のお許しをもらい、人間界の視察に来ましたの。アドランド城に向かうはずだったのですが……召使いが間違えてしまいまして」
「全く逆だね。これからどうするの?」
「……どうしたものでしょうか」
悩んだ様子で、考えながら、また近くのたんぽぽを食べ始めるアイニャレト。
摘んではシャクシャク、摘んではシャクシャク。
余程美味しいのか止まらない。
「それ……食べるんだね魔族は」
「人間は食べないのですか?」
「あんまり聞かないね」
「あら……なんていいますの?」
「たんぽぽって言うんだ」
「たんぽぽ……ふふっ♪とっても美味しいですわよ♪」
僕の人生で初めての魔族。
大昔は脅威の存在として、人間を苦しめていたらしいが、今の魔族は全く敵対心のないものだろうか。
まるで同じ人間のようだが、高い崖から落ちても平気で、挙げ句には身近に咲いているたんぽぽを食す不思議な存在。でも、そんな目の前に彼女に何故か癒やされるようだ。
ひとりになってしまって、何も知らなそうな彼女をそのままにしておく訳にはいかない。
だから、少し勇気を出して聞いてみる。
「あ、あのさ……」
「……なんでしょうか?」
「その……よかったら……とりあえず町に来ないかな
。そこなら大人もいるから」
それを聞いた時……
彼女の温かな笑顔。見たこともない綺麗な花のような笑顔に心を奪われそうになってしまう。
「……本当に?あはっ……嬉しいですわ♪貴方のお名前は?」
「……リサンタ」
「よろしくお願いしますわリサンタ♪」
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