第1話たんぽぽを食べる女

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もうまずいと思った時。 アイニャが僕から降りると、バレッジベアの前に立った。 そして一言。 「……めっ!!」 森中に響く声で叫んだのだ。 止まって立ち上がるベアはアイニャに唸り声をあげた。しかし、襲っては来なかった。 「なんで襲うのですか、熊さん!私達は何もしていませんわよ!」 そう言うと、ベアがまた鳴き声を発する。 「……なるほど、それが貴方の主張ですね」 「アイニャ、もしかして……話せるの?」 恐れながら聞くと、振り向いて彼女は頷いた。 「はい、話せますわよ。熊さんは人間は美味しいから食べたいそうです。お前達だって動物を捕まえて食べているだろう、それと変わらないと」 「……そうだね。ここは彼らの住処だし、同じ事をしている。だから文句は言えないけど……」 「あら!じゃあリセンタは此処で食べられますの?」 「イヤだ!死にたくないっ!」 「そうですよね、私も町まで連れて行ってもらわないといけません。だから熊さん、今日は諦めてはもらえませんか?食べる事自体は否定しませんが」 「ガウガウ……ガァァァア!!」 「めっちゃ怒り始めたよ?!」 「うるさい、腹が減ってんだ大人しく食われろ。だそうですわ!」 「ひぃぃい!!」 「リセンタ、熊さんは食べれますか?」 「こ、こんな時に?!た、食べれるけど……」 「……そうですか」 すると一歩前に出るアイニャ。 容赦なく爪が襲ってこようとする時だ。 ただ片手で、目にも見えないパンチを胸に一発。 アイニャはバレッジベアにおみまいしたのだ。 するとベアはその一撃で、倒れてしまった。 「……えっ?」 「終わりましたわリセンタ!今日はこの熊さんが晩御飯ですわね!」 ベアを一撃で殺す女性なんて、見たこともなかった。あまりの突然な事に、頭が追いつかない。 しかも、当たり前のように…… 200キロ以上はあるベアを持ち上げて、歩き始めてしまったのだ。 圧倒的な強さと怪力。 可愛い顔に似つかないその能力に、ただただ驚かされるだけだ。
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