0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
もうまずいと思った時。
アイニャが僕から降りると、バレッジベアの前に立った。
そして一言。
「……めっ!!」
森中に響く声で叫んだのだ。
止まって立ち上がるベアはアイニャに唸り声をあげた。しかし、襲っては来なかった。
「なんで襲うのですか、熊さん!私達は何もしていませんわよ!」
そう言うと、ベアがまた鳴き声を発する。
「……なるほど、それが貴方の主張ですね」
「アイニャ、もしかして……話せるの?」
恐れながら聞くと、振り向いて彼女は頷いた。
「はい、話せますわよ。熊さんは人間は美味しいから食べたいそうです。お前達だって動物を捕まえて食べているだろう、それと変わらないと」
「……そうだね。ここは彼らの住処だし、同じ事をしている。だから文句は言えないけど……」
「あら!じゃあリセンタは此処で食べられますの?」
「イヤだ!死にたくないっ!」
「そうですよね、私も町まで連れて行ってもらわないといけません。だから熊さん、今日は諦めてはもらえませんか?食べる事自体は否定しませんが」
「ガウガウ……ガァァァア!!」
「めっちゃ怒り始めたよ?!」
「うるさい、腹が減ってんだ大人しく食われろ。だそうですわ!」
「ひぃぃい!!」
「リセンタ、熊さんは食べれますか?」
「こ、こんな時に?!た、食べれるけど……」
「……そうですか」
すると一歩前に出るアイニャ。
容赦なく爪が襲ってこようとする時だ。
ただ片手で、目にも見えないパンチを胸に一発。
アイニャはバレッジベアにおみまいしたのだ。
するとベアはその一撃で、倒れてしまった。
「……えっ?」
「終わりましたわリセンタ!今日はこの熊さんが晩御飯ですわね!」
ベアを一撃で殺す女性なんて、見たこともなかった。あまりの突然な事に、頭が追いつかない。
しかも、当たり前のように……
200キロ以上はあるベアを持ち上げて、歩き始めてしまったのだ。
圧倒的な強さと怪力。
可愛い顔に似つかないその能力に、ただただ驚かされるだけだ。
最初のコメントを投稿しよう!