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町に戻ってきたら、誰もが僕とアイニャを見ていた。バレッジベアを軽々と持ってきた魔族の女の子と共に帰ってきたのだから当たり前ではあるがとても恥ずかしい。
けれどもアイニャは恥ずかしがるどころか、人間が沢山いる町に来ただけで楽しそうに目を輝かせていた。
「これが……リセンタの町!どうしましょう気になるものが多すぎて……わくわくしちゃいますわね!」
人々、建物、食べ物や雑貨。
全てのものが斬新で仕方がない。
「リセンタどうしたそのねぇちゃん……バレッジベアを一人で持ち上げるだなんてよ。魔族の子か?」
「はい、森で困っていて助けたんです」
みんながざわざわしているなか、恥ずかしくてあまり受け答えも出来ずにただベアを卸売する場所に向かっていった。
魔族とは敵対はしていないが、干渉もしていない。首都の人々は関わりがあるかもしれないが、少なくとも僕達の町は、近くにダンジョンもない為に、無縁に等しい。
だから魔族のアイニャは珍しい者。ざわついて、見に来るのも仕方がない。
狩猟を主だって取り扱う店に行くと、親方は目を見開いて驚いてしまう。持ってきてもせいぜいうさぎくらいの僕が、女の子にバレッジベアを持たせてやってきたのだから。
「お、お前どうした!バレッジベアを丸々持ってきたのか!」
「はい、斯々然々で……」
「はぁ……てかねぇちゃんすげぇな……俺でも一人じゃ持てねぇよ」
「そうですか?あと2頭程なら持てるかもしれませんわ♪私の名前はアイニャレトと申します。よろしくお願い致しますわ♪」
「ほぇ……魔族のねぇちゃんはすげぇな。しかも礼儀もいいな!おいらはバスネっていうんだ。よろしくな!」
荷台にベアを置いて、丁寧にお辞儀をしたあと、重さを図り、買取額を決めてもらっている間、彼女は店内を探索する。
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