第1話たんぽぽを食べる女

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第1話たんぽぽを食べる女

あまり整備されていない山道を、馬車が進んでいる。本当に理解しているのか分からない地図を、手綱をもつ者の隣で見ていた。 「……これ絶対違うよね?」 「……多分」 ドクロのような、お面のようなものをつける魔族。 黒い焔のような身体。小さい身体と手足で頑張っている。子供のような2体は、道に迷って既に1日が経っていた。 目指すは北にあるアドランド城。そこには絶対に辿りつく訳はなかった。 地図の見方を知らなかった2体は南に向かっていて、もはや城などはるか遠くだった。 「……困ったね」 「……困ったねぇ」 それでも戻ろうとはしない2体は、ずっとお姫様を運んでいた。魔王の許しを得て、地上界に出てきた彼女を視察の為にアドランドにつれていくはずだったのに、今ではただの旅行である。 中ではカーテンを少し開けて、外を見ているお姫様。真っ白の肌に赤い瞳。銀の髪は艶のあるさらさら靡くもの。 ゴッシックなドレスを身に纏う可愛らしいお姫様。 1日中彷徨っていたのに、全く飽きることもなく、文句も言わず、召使いに全て任していた。 「お姫様ー迷いましたぁ」 「ごめんなさぁい」 「いいですわ。全てが初めてで楽しいですもの♪」 「ピンクー」 「なにーヒマラヤ?」 「魔王様に連絡するルビーは?」 「え?ヒマラヤが持ってきたんじゃないのぉ?」 またまた不穏な会話をする2体。 どうやら連絡する手段もないようだった。 「どうするぃ?」 「……姫様」 一度馬車を止めて、よちよちと降りて、ポテポテと歩く彼ら。馬車の扉ノブに届かない為に、ピンクの上にヒマラヤが乗って、開けるが、その反動でヒマラヤはポテっと落ちた。 「あら、どうしたの?」 「ごめんなさーい。魔王様と連絡が取れないですぅ」 「忘れてしまいましたぁ」
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