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私が、年長さんの時だった。
その日は台風が来て家の人が迎えに来ていた。私には誰も迎えが来なかった。
「近いから一人でも平気よね」
先生が言った。
大人なら5分とかからない距離だったからか。
私は無言で頷くしかなかった。
傘をさして向かい風に向かって歩く。前が見えない。雨粒が体に当たる
「アッ」
と言った時足が何かに引っかかって転んだ。
側溝に右足が落ちて膝をぶつけた。
「痛い」
傘をずらすと血が出てるのが見えた。
あまりの痛さと血が出てるのに驚き大声で泣いた。しかし、その声は台風の雨風の音にかき消された。
家に着くと誰もいなかった。農家地帯なのでどの家も農作業が出来ないので家にいる。
私は母親の姿を捜して泣きながら部屋を開けて歩いた。農家の家で一部屋が広い
「そうだ、隠居部屋かも」
母屋と繋がってる廊下を足を引きずり歩いた。
祖父母もいなかった。何故誰もいないの?
奥の最後の部屋のふすまを開けると母親がいた。
私を見ると笑い出した。
何がおかしいのだろう、怪我をして血を流し雨に打たれた娘が・・・
記憶がそこで途切れたその後の記憶が無い。
大人になって膝の傷跡を見ると思い出す。
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